YUKO MURAKAMI

DoCLASSE NINE_No.03

40歳で師に会い、
生涯の仕事に導かれる。

 中学生と小学生のヤンチャな息子を育てる、日本の普通のお母さんでした。ある日、引っ越しの荷造りをしていて、タンスの中にシツケも取っていない着物を見つけます。もったいないと着付けを習うことにしたその学校で、着物学の師匠、清水とき先生に巡り会いました。大正のお生まれなのに、40歳の私がたじろぐほど着物への思いが熱い。日本人が歴史をかけて守り抜いてきた伝統技術と文化が、失われていく無念さを涙を浮かべて語られたのです。
 その日から私は、染元や織り元、文様や手描きの職人を訪ね歩き、美しさに魅了され、指の間からこぼれ落ちていく貴重な着物文化に真剣になりました。絶やさず次世代に渡したいと痛烈に思いました。そして起業までしてしまいます。夢中になって家のことが疎かになると詫びる私に、夫は「大変なこともあるだろうけれど、やめちゃいけないよ」と背中を押してくれました。
 しかしその後、夫の会社が倒産。この事態を乗り越えなければと悩む中で、「苦しい時こそ人に幸せの種蒔きを」という清水とき先生の戦後のお話を思い出し、レンタル着付けの活動を始め、年間900人におよぶ女性の笑顔から勇気と誇りを受け取ることができました。

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MEMBER'S PROFILE

村上 裕子 / Yuko Murakami
株式会社 万インターナショナル 代表取締役

1963年埼玉県生まれ。2003年から着物を活かしたドレス、ワンピース、バッグなどの製作販売を手がける。伝統技術の工房を始め、日本の職人の方から貴重な技術の教えを受けながら、和の素材を用い洋の立体裁断、縫製で仕立て国内外に多くのファンを持つ。夫との間に2男がある。