9人委員会インタビュー
Salsa/Dogイベントオーガナイザー
高橋もとかさん

サルサ、サルサ、美しく若やぐサルサ。

UP DATE _ 2016.03.25

元気な私を襲った、40歳の試練

 テニスに夢中になり、試合でもいい結果を残すことが出来て、自分の身体を存分に動かす楽しさを知った10代。父は外資系の会社勤め、スポーツだけでなくダンスやエンターテインメント、ファッションなども人生を楽しむ大切なものと考え、娘が何に興味を持っても応援してくれました。その大きく広げられた腕の中で成長したと思います。厳しい就職戦争にも参戦せず、母の経営する書道教室のアシスタントとアルバイトで仕事らしい経験をしてから20代前半で結婚。息子を授かり、地元横浜でボランティアに精を出す元気なママでした。そう、あの日までは。

 あと数日で40歳の誕生日という午後、スポーツジムで汗を流した帰りのバスの中で体が「ガクン」と崩れるような感覚になり、その時から耐え難い不調が始まりました。夜は一睡もできない、食事が摂れない、体のあちこちが痛くて我慢できないほどの苦しみが続きます。体重は40㌔まで落ち込み、アバラ骨が見えるほどガリガリに痩せ、息をすることさえ苦しい。原因は早過ぎる更年期で、不定愁訴の辛さは家族にも伝えきれないほど過酷なものでした。不調は3年近く続き、家事もままならず、将来への不安にさいなまれながら一日一日をどうにかやり過ごす毎日です。生きているのがやっとというような状態でした。

 そして忘れもしない2000年のある日、映画『SALSA(サルサ)』が素晴らしかったよ、とダンス好きな両親から勧められ、友人の肩にすがるようにして体を引きずりながら見に行ったのです。それは、くすぶり続けていた体や心が目覚めるような震えるほどの衝撃でした。サルサを踊りたい。帰り道はそのことばかり考えていた気がします。

踊りたい!誘いたい!

 突き動かされはしたものの、サルサってどこで習えるの?インターネットもない時代には探しようもなかったんですね。でも、なんと市の広報紙に載っていたんですよ、体育館でサルサをご一緒にみたいな催しが。さすが横浜(笑) 。高校生が卓球をしていたり、子どもが遊んでいるような一角でサルサ。それでもやっぱり楽しかった。仲間ができ、真剣にサルサを習い、ささやかなパーティをしたりするうちに、市の生涯学習支援講座も受け持つようになっていきました。そして、ある湘南のレストランからパーティ企画を依頼され、なんと80人もの参加者を集める大盛況となったの。

 驚いたことに体の不調はウソのように消えていました。踊る楽しさ、目的を持った気持ちのハリ、喜んでくれる人がいること。そのどれもがパワーとなって私の生命力を呼び覚ましてくれたとしか思えません。もちろん家庭を預かる主婦業もないがしろにはできないけれど、何かいつも胸の中に温かい火が燃えているというか、生きるエンジンがかかっているような喜びなのです。「みんな~、サルサで元気になれるよ」と誘いたい気持ちがあふれていましたね。そんな時に、都心の真ん中にある大きな企業から広場でのイベントを打診され、「ビビッ!」と感じて全力で成功させました。大好評を博して継続が決まり、企業側から私個人では取り決めが難しいからと申し出があって、知人のNPO組織に協力を依頼。2年間で1000人クラスのイベントに成長させ、テレビ番組で紹介されるほどの人気を得てスポンサーもつき始めました。

 ところが手ひどい仕打ちを受けます。サルサのためにとほとんどボランティアで頑張っていた私は、軌道に乗せたらお役御免とばかりに放り出されてしまう。集客できればビジネスだ、と変身する人がいることを思い知り、私は裏切られてひどく傷ついてしまったのです。

 実現は本当に嬉しいことでしたし、私はこの体験を経て「視点を変える」という新しい考え方を自分の中に取り込むことが出来たと思います。既存のもの、既存の価値観、世の中や会社はいまの状態が当たり前で、私一人が声を上げても何も変わらないという受け身の気持ち、それは違うよと。視点を変え、自分が本当に望むことをしっかり確かめたら、主張したり行動したりしていけばいいと確信したのですね。それが、さらに私の人生を大きく引っ張っていく力になりました。

若々しい人生をあきらめない

 悔しい、本当に悔しい。その気持ちの根底にあったのは、こんなに素晴らしいサルサを踊れず、理解もできない人がビジネスの道具にしたということですね。で、考えました。この悔しさを全部ぶつけて、やっぱり私は、人をサルサに巻き込むしかない。スタートダッシュは、横浜の歴史的な建造物でサルサ、といういくつかのイベントです。企画書を書いて許可をもらうのも会場をセッティングするのも、気の遠くなるような作業でした。たった数時間のイベントに、何日も何週間も準備する大変さ。でも、私は人の喜ぶ姿を見ることが生きがいなのかもしれません。

 そして、活動は加速していきます。イベント前の広報や宣伝も全力でやり、仲間への声掛けにも気持ちを込め、メディアからの信頼もいただけるようになっていく。踊る人も見る人も本当に活き活きとして楽しそうな映像って、なかなかありませんからね。しかもとびきり美しい(笑) 。気がついたら、たくさんのお誘いをいただけるようになって、六本木のMAHARAJAのオーガナイザーにも就任しましたSalsaのダンサーと愛犬が同じステージに立つなどの企画も楽しんでもらっています。

 何より、サルサって男性と女性が組んで踊るロマンチックなダンス。いくつからでも始めた人は必ず綺麗になるんです。衣装も体にピッタリ沿うデザインだから、自分のシルエット管理が厳しくなる(笑) 。私も毎日ピタッとした服を自分に課して鏡の前に立ちます。見られることの効果も大きいのですね。もっともっとサルサの楽しさを知って欲しくて、初めての方のためのイベントもたくさん企画しますよ。きっと、私のように、日常がそして人生が変わります。

高橋 もとか/Motoko Takahashi
Salsa/Dogイベントオーガナイザー

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